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「Blender 4.2 LTS」の新機能を紹介
こんにちは!
今回は、2024年7月16日に正式リリースされた、フリーの3DCGソフト「Blender」の新バージョン「Blender 4.2 LTS」の新機能について紹介したいと思います!
バージョンアップに伴って数多くの機能・改善事項が追加されましたが、その中で注目すべき内容をピックアップし、実際に触ってみながら紹介します!
参考:Blender4.2 LTS 公式リリースノート
Blender 4.2 LTSをインストールしよう!
Blenderは、オープンソースの統合型3DCGソフトで、誰でも無料で使うことができます!
今回紹介するBlender 4.2 LTSは、「Long Time Support」(長期サポート版)といって、2026年7月までの2年間の長期サポートがされるバージョンです。
今後も新しいバージョンがリリースされた後も、サポート期間中は(最新の安定バージョンに適用される)重要な修正が反映されるそうです。
About Blender LTS
The Blender LTS program is aimed at ensuring that long-lasting projects can be executed using a stable Blender version, which will provide critical fixes throughout a 2-year time span.
The LTS version will not have any new features, API changes or improvements. Any critical fix that is applied to the latest stable version, will be regularly ported over to active Blender LTS releases.
Learn more about Blender LTS.
(日本語訳)Blender LTSについて
Blender LTS プログラムは、長期にわたるプロジェクトが安定した Blender バージョンを使用して実行できるようにすることを目的としており、2 年間にわたって重要な修正が提供されます。
LTS バージョンには、新機能、API の変更、改善はありません。最新の安定バージョンに適用される重要な修正は、アクティブな Blender LTS リリースに定期的に移植されます。
出典:サイト名 URL https://www.blender.org/download/lts/
今回の更新では、新しいレンダリングエンジン(レンダラー)「Eevee NEXT」や、アドオンに代わる拡張機能「エクステンション(Extension)」など、大幅なアップデートが加えられています。
まずは、Blender公式ページから、Blender 4.2 LTSをダウンロードしましょう!
Windowsのインストール版はダウンロードページの上のリンクから、それ以外のバージョン(macOS, Linux, Portable版など)は下のリンクからダウンロードできます。
Blenderのインストール・基本設定については、コチラの記事を参考に実施してみてください。
Blender 4.2 LTSの主要な新機能・変更点はコチラ!
本記事では、今回のバージョンアップの目玉となる以下の新機能について紹介します。
- 新しいレンダラー「Eevee NEXT」
- ディスプレイスメントに対応
- よりリアルなライティングが可能に
- モーションブラーにシャッターカーブが追加
- SSSがよりリアルに
- Cyclesの新機能
- レイポータルBSDF
- Thin Film Interference(薄膜干渉)
- エクステンション(Extension)
- インストール方法
- 更新方法
- ジオメトリーノードの新機能
- 「行列(Matrix)」ソケットの追加
- マウス操作を取得するノードの追加
- ビデオシーケンサーの機能改善
- UIが一新
- テキストストリップの装飾効果
- その他の変更点
これらの変更によって、以前のバージョンと比べてBlenderでできることの幅が広がっていますので、ぜひBlender4.2 LTSをインストールして使ってみていただければと思います。
上記でピックアップした以外にも、Blender4.2 LTSでは数多くの変更点があります。
Blender4.2 LTSの全アップデート内容一覧・詳細については、コチラのリリースノートを参照してください。
新しいレンダラー「Eevee NEXT」
Blender 4.2 LTSでは、高速でレンダリングできるレンダラー「Eevee」の進化版、「Eevee NEXT」が搭載されました。
以前「Blender 3.4アルファ版」の記事でEevee NEXTのプロトタイプ版を紹介しましたが、2年経ってついに正式版に搭載されました。
「Eevee NEXT」を使うことで、Eeveeの売りである「レンダリングの速さ」を損なうことなく、よりリアルな描画が可能になっているので、実際に使ってみながら機能を紹介します!
ちなみに、Blender 4.2では旧バージョンのEeveeは使えなくなり、レンダーエンジンの選択項目で「EEVEE」を選択するとEevee NEXTが設定されます。
また、マテリアルプレビューでの表示についてもEevee NEXTが使われています。
Blenderのレンダラー「Eevee(イーヴィー)」をうまく使いこなすコツについては、以前のバージョンですがこちらの記事で説明しているので、あわせて参考にしてみてください。
ディスプレイスメントに対応
Blenderでは、マテリアルの凹凸を表現する方法として以下3つの方法があります。
- バンプ…白黒で凹凸の高さ・深さを表現
- ノーマルマップ…色で凹凸の画素の角度を表現
- ディスプレイスメント…実際にメッシュを変形させて表示する
これまで、Cyclesでは3つの方法をすべて使うことができましたが、Eeveeではディスプレイスメントに対応していませんでした。
しかし、Eevee Nextではこちらのようにディスプレイスメントが反映され、オブジェクトの輪郭も変形して表示されるようになります。
ディスプレイスメントを有効にするには、以下の設定を行う必要があります。
- マテリアルの「ディスプレイスメント」ノードを「マテリアル出力」の「ディスプレイスメント」に接続する。
- マテリアルプロパティの「設定」→「サーフェス」→「ディスプレイスメント」を「バンプのみ」から「ディスプレイスメントのみ」または「ディスプレイスメントとバンプ」に変更する。
また、あらかじめメッシュを細分化しておかないとディスプレイスメントは反映されないので、注意してください。
ライティングが改善
Blender 4.2 LTSで採用されたEevee NEXTでは、ライティングの機能が改善されて光をよりリアルに見せることができるようになりました。
改善された項目を一つ一つ紹介していきます。
グローバルイルミネーション
従来のEEVEEではデフォルトでは間接光を表現できず、「イラディアンスボリューム」を追加して「間接照明をベイク」する必要がありました。
ですが、Blender 4.2では「レンダープロパティ」の「レイトレーシング」のチェックを入れるだけで、関節光を表現できるようになりました。
光の屈折や反射を表現する際に、従来のEEVEEでは「スクリーンスペース反射」のチェックをオンにしていましたが、Blender 4.2では「レイトレーシング」に置き換わっています。
ボリュームライトがよりリアルに
Blender 4.2では、以前のバージョンに比べてボリュームを透過する光(ボリュームライト)が綺麗に見えるようになりました。
Blender 4.1では、カメラの画角を動かすと斜めの線が入ったりしますが、Blender 4.2は綺麗に表示されています。
ライトの個数制限なし
以前のバージョンでは、Eeveeで使用可能なライトは100個まででした。
Blender 4.2では、ライトの個数制限が削除されたので、多数のライトを使用する複雑なシーンを表現できるようになりました。
「ブルーム」はコンポジットでの追加が必要
Blender 4.1までのバージョンでは、Eeveeに「ブルーム(Bloom)」という設定項目があり、こちらのように光の放射を表現することができました。
Blender 4.2ではブルームが削除されたため、コンポジットの「フィルター」→「グレア」ノードで設定する必要があります。
「フォググロー」が元々のブルームのイメージに近いと思いますが、Blender 4.2から追加された「ブルーム」を設定すると、より強めの放射を表現できます。
モーションブラーにシャッターカーブが追加
Eevee NEXTでは、モーションブラーに「シャッターカーブ」が追加されて、残像の入り方を自由に調整できるようになりました。
SSSがよりリアルに
プリンシプルBSDFでは、人の肌やガラスなどの「物質内での光の散乱」を表現する「SSS」(サブサーフェススキャッタリング)という機能があります。
Blender 4.2では、EeveeのSSSが改善されてよりリアルに見えるようになりました。
「物質内での光の散乱」を表現する「サブサーフェススキャッタリング」(SSS)の設定方法や使い方については、こちらの記事を参考にしてみてください。
Cyclesの新機能
Blender 4.2 LTSでは「Eevee Next」だけでなく、物理ベースのレンダラー「Cycles」にも面白いな機能が追加されています。
実際に使いながら紹介したいと思います!
レイポータルBSDF
Blender 4.2 LTSで追加された「レイポータルBSDF」はCyclesのみで使えるノードです。
シーン内の別の場所にあるレイ(光線)を表示することができます。
たとえば、こちらのようなノードを組むことで、レイの位置をオフセットすることができます。
レイポータルBSDFを応用することで、こちらのように異空間につながる扉(ポータル)を表現することができます。
出典:Blenderリファレンスマニュアル URL https://docs.blender.org/manual/en/4.2/render/shader_nodes/shader/ray_portal.html
Thin Film Interference(薄膜干渉)
プリンシプルBSDFに「薄膜」という項目が追加されて、シャボン玉のような薄い膜にできる色を表現できるようになりました。
「薄膜の厚さ」をある程度大きい値に設定して「薄膜のIOR」をいじると、色を自由に変えられます。
リアルなガラスの表現にも使えそうです。
エクステンション(Extension)
Blender 4.2 LTSでは、従来の「アドオン」が「エクステンション」に置き換えられて、オンラインで入手できるようになりました。
「エクステンション」のインストール方法や更新方法について説明していきます。
Blenderの機能を拡張できる「アドオン」のインストール方法や使用方法についてはこちらの記事にまとめていますので、あわせて参考にしてみてください。
インストール方法
エクステンションの入手方法は以下3通りの方法があります。
- Blender上で入手(オンライン)
- Blenderエクステンションのサイトから入手
- ディスクからインストール
Blender上で入手(オンライン)
まず、トップバーの「編集」→「プリファレンス」→「システム」→「ネットワーク」から「オンラインアクセスを許可」にチェックを入れてください。
すると、「エクステンションを入手」の「利用可能」のリストからエクステンションを選択し、「インストール」をクリックすると入手できます。
入手したエクステンションは「インストール済み」に表示されます。
Blenderエクステンションのサイトから入手
エクステンションは、以下の公式サイトからも入手可能です。
エクステンションを選択して、「Get Add-on」をクリックして表示されるアイコンをBlenderにドラッグアンドドロップするだけで、インストールできます。
(事前に「システム」→「オンラインアクセスを許可」を有効にしておく必要があります)
ディスクからインストール
従来の外部アドオン等については、ディスクからインストールすることも可能です。
「エクステンションを入手」画面右上の「V」マークをクリックし「ディスクからインストール」をクリックすることでインストールできます。
また、ZipファイルをBlenderにドラッグアンドドロップすることでもインストールできます。
更新方法
Blenderの更新時にエクステンションの更新がチェックされます。
更新がある場合は、以下のようにインストール済みのエクステンションに「更新(Update)」が表示されるそうです。
出典:Blender 4.2 リリースノート URL https://www.blender.org/download/releases/4-2/
ジオメトリーノードの新機能
Blender 4.2 LTSでは、ノードを使ってオブジェクトを編集できる「ジオメトリノード」にも機能が追加されたので、紹介します。
ノードを使ってモデルの形状などを編集できる「ジオメトリノード」の基本的な使い方については、こちらの記事を参考にしてみてください。
「行列(Matrix)」ソケットの追加
シミュレーションノード向けの機能として、行列(Matrix)を格納するソケットがジオメトリノードに追加されました。
Blender公式から配布されているデモファイルでは、シミュレーションゾーン内で行列演算を行い、その結果をもとに積み重ねられたピザ箱の位置・回転を設定しています。
ジオメトリノードを使って物理シミュレーションができる「シミュレーションノード」の使い方・表現方法については、こちらの記事にまとめているので合わせて参考にしてみてください。
マウス操作を取得するノードの追加
ジオメトリノードを使ってBlender操作ができる「ノードツール」向けの機能として、マウス操作を取得するノードが追加されました。
Blender公式から配布されているデモファイルでは、「マウス位置」と「ビューポート変換」のノードを使って、ビューポート上でマウスがクリックした位置を3D空間上に変換しています。
ビデオシーケンサーの機能改善
Blender4.1では、動画ファイルを編集したり音声を追加したりできる「ビデオシーケンサー」の機能が改善されたので、簡単に内容を紹介します。
Blenderのビデオシーケンサーを使って動画に音声を追加する方法については、コチラの記事にまとめていますので、あわせて参考にしてみてください!
UIが一新
Blender 4.2では、以下のようにUIが一新されて、丸みがあって識別しやすいデザインになりました。
また、同じチャンネル内でストリップの終わりと始まりが隣接しているフレームを、同時に動かせるようになりました。
テキストストリップの装飾効果
文字を追加するテキストストリップの装飾効果が追加されました。
以下のように、「影」にぼかしを入れたり、「アウトライン」を追加できるようになりました。
その他の変更点
最後に、その他の変更点についていくつか紹介します。
コレクションエクスポーター
Blender 4.2 LTSでは、コレクションごとにエクスポート設定を保存できる「コレクションエクスポーター」という機能が追加されました。
FBXやSTLなど複数のファイル形式でエクスポートする設定を行うことも可能です。
コレクションエクスポーターの設定はblendファイルに保存されるので、モデルのエクスポートを多用する場合に便利そうです。
他のCGソフトやゲームエンジン等とモデルデータを共有できる「FBX形式」のファイルのインポート・エクスポート方法については、こちらを合わせて参考にしてみてください。
スカルプトの新機能「Polylineツール」
スカルプトの機能として、多角形を使ってモデリング・ブーリアンができる「Polylineツール」が追加されました。
こちらのように、「ポリライントリム」を使うことで、スカルプト中のオブジェクトにメッシュを追加したり、多角形でくり抜いたりすることができます。
新しいビュー変換「Khronos PBR Neutral」
実物に忠実な色を表示することを目的としてリリースされたビュー変換「Khronos PBR Neutral Tone Mapper」が、Blender 4.2 LTSから追加されました。
他のビュー変換と比較してみると、やや赤みがかって見えます。
実物に忠実な色を表示することができるらしいので、リアル寄りの作品を作りたい方は、採用を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
Blender 4.2 LTSで新しく追加・変更されたコチラの機能について、簡単に使い方・使用例を解説してみました。
どれも便利で面白い機能なので、ぜひ皆さんもBlender 4.2 LTSをインストールして試してみてください!
Blender 4.2 LTSの主要な新機能まとめ
- 新しいレンダラー「Eevee NEXT」
- ディスプレイスメントに対応
- ライティングが改善
- モーションブラーにシャッターカーブが追加
- SSSがよりリアルに
- Cyclesの新機能
- レイポータルBSDF
- Thin Film Interference(薄膜干渉)
- エクステンション(Extension)
- インストール方法
- 更新方法
- ジオメトリーノードの新機能
- 「行列(Matrix)」ソケットの追加
- マウス操作を取得するノードの追加
- ビデオシーケンサーの機能改善
- UIが一新
- テキストストリップの装飾効果
- その他の変更点
- コレクションエクスポーター
- スカルプトの新機能「Polylineツール」
- 新しいビュー変換「Khronos PBR Neutral」